昨日も行動観察クラスの皆様、本当によく頑張られましたね!発表力や、しっかりと一度で説明を聴き取ろうとされるお力も、随分伸びていらっしゃり、成果を感じました。今月後半の3クラスでは、春休みということで、小さな小さなお人形作りとドールハウスにも挑戦して頂いておりますが、楽しい中にも、習得して頂くべき多くの課題がふくまれております。さて、昨日のお人形さんのお洋服には、リバティの生地を使わせて頂きました。先日の月曜日クラスではより実践的にと、和紙でお洋服を制作して頂きましたが、布のお洋服にはまた違った趣もございますので、次回のクラスの折に、皆様に小さな生地をお渡しさせて頂きますね。また、昨日の金曜日クラスの方達には、和紙を差し上げます。実際にモールと折り紙だけであっという間に可愛いいお洋服を着たお人形が出来るということを楽まれながら練習して頂けますと、巧緻性も自然にアップしてまいります。お時間の合間に、この春休みに沢山のお人形さんを作って、お菓子の箱の中に、小さな幼稚園を作ったり、沢山のお部屋があるドールハウスを作られるのも楽しいですよ。沢山の端切れをお嬢様に差し上げれば、カーテンにしたり、壁紙にしたり、じゅうたんにしたりと、夢中で制作に没頭されることでしょう。楽しんで、自ら率先して行う・・・気が付くと、何か作っている・・・ということがご家庭での巧緻性練習には欠かせません。お嬢様と手芸のお店、例えば、ホビーラホビーレさんなどに行かれ、使えそうな端切れやレース、リボン、ボタンなど、ご一緒に探されてもきっと楽しいですね!
チョコリットをご卒業されましたお姉さま方も、ご家庭での自由なお時間を制作に勤しまれ、楽しまれておられ、そのご様子を伺わせて頂く度に、本当に幸せになるのです。

さて・・・桜も満開ですね。このような詩はいかがでしょうか。

     花を見ていて   

            作 まどみちお

花が咲いているところへ行って
花を見ている
ふと 思うことがある

もしかして 私がここに来たために
逃げ帰られたのではないかしらと
あのそしらぬ顔の
天は・・・

今が今まで頬ずりしていらっしゃった
この花から
一気に あの
高みにある太古のお屋敷へ

そのへんにまだ残る 高貴なかおりも
今あとを追って
しずしずと
昇っていきつつあるのかしらと・・・

この詩の世界を絵で描いたらとても素敵な絵になるのではないかと思うのです。油絵ならばシャガールの描いた空の絵のようになるのでしょうか・・・でも、やはり、日本画の方がよりこの詩の世界は描きやすいのかもしれません。紗のように透けて天から伸びてはためく衣と、その周りに漂う香りを桜色の霧のように現してみたら・・・などと、私にとりまして、絵画が目の前に浮かんで来るような作品なのです。

人があまり行かない山の頂きに、お花の咲く一角があり、おそらく桜も咲いているのでしょう。お花は清楚な色彩で香りも強くはないけれど、風すら遠慮がちにそよいでいるので、その一帯に芳しい春の香気が湛えられていて・・・あたりは静かでミツバチの羽音すらしない。そこへ、ついに耐えかねて、桜色の薄い雲の衣を纏った天が花々を愛でに降りて来られる。ところが、折あしく分け入って来た「私」。天はまた高みへと帰り、そしらぬ顔をしているけれど、辺り一面に立ち上る香りは、天の秘密の来訪を喚起させている・・・。

この詩を読むたびに、春爛漫のまさに今の季節が、思い起こされ、寒い冬などにはそうした穏やかな自然にまた出会えることが想像だに出来なかったのに、また春が巡ってきたという喜びが湧いてまいります。桜の花の咲いているところに参りますと、どなたかに歓待され、準備万端に整えられた入り口に立っているかのような感じがして、フワっと喜びが湧き、少し改まった気持ちにもなります。「天」に向かってなのか・・・準備して下さったどなたかに、「お邪魔致します・・・。」と呟きたくなるような・・・。

さて、先日のことです。横浜駅の地下街におりましたら、地下鉄の改札口周辺で、お帽子を被られた素敵なご婦人(・・・母と同じくらいのお年でしょうか。)が、あちらにこちらに歩かれて、なんだかとてもお困りのご様子なのです。私がその方のおそばで少し立ち止まりましたら、「あの・・・すみません、あざみ野に行きたいのですけれど・・・切符はどちらで買ったらよろしいのでしょう。」と尋ねられたのです。「どうぞ、こちらです。」と私はご一緒に歩いてご案内をしようとしました。すると、そのご婦人は、急に私の腕に両手ですがられ、「横浜は、本当に久しぶりなの。」とにっこりと微笑まれたのです。「全く分からなくて、困ってしまったの。」と、本当に無邪気にお話しをされ、もう、すっかりと安心されたご様子で、地下鉄の階段が見えると、小鳥が飛び立つように「ああ、良かった!」と2,3歩走りかけられ、思い出したかのように振り返られると、「どうもありがとうございました。」と深々とご挨拶をして下さり、一歩一歩ゆっくりと階段を下りて行かれたのでした。私は、その方の後ろ姿が見えなくなるまで見届けると、フッと、まだ腕に残っているその方の手の感触に気付きました。柔らかで・・・すべすべとした、優しいその方の手・・・私の母の手に、良く似ている・・・と思いました。そうです。その方の手の感触は、どなたかのお母様の「母の手」なのですね。優しい手。母の手は、眠ってしまった我が子を抱いたり、泣いている子供の頭を撫ぜたり、痛むお腹をさすってあげたりしているうちに、また、家族の為にお料理を作ったり、お洗濯を畳んだり、お洋服を作ったり、刺繍を差しているうちに・・・柔らかくなっていくのではないでしょうか・・・。懐かしい感触を思いがけず思い出させて頂き、胸の中が熱くなりました。