水曜日に、国立音楽院の生徒さん(1歳半と3歳の坊やのお母さま)にクリスマスにお勧めの本について聞かれました。ブログご覧になって下さいね!と申しあげましたので、書かせて頂きますね。宜しければご参考になさって下さいませ。

まず・・・。3歳のお子さまでしたら、「きのいいサンタ」さとうわきこ作 金の星社 はいかがでしょうか。
サンタさんの奥様って、どんな素敵な方なのかしら?と期待しつつお子さまと絵本の扉を開けてみて下さい。この、奥様の雰囲気はどこかで・・・。作者が「ばばばあちゃんシリーズ」の作者と申しあげましたら、ヒントを差し上げ過ぎでしょうか。暖かなお部屋の中で、暖かな気持ちが、どんどんクレッシェンドになっていく本なのです。私は、教室でも、自分の子とも、椅子を倒してソリに見立て、「きのいいサンタ」さんごっこをして楽しんで来ました。お部屋にあるおもちゃを総動員して「だいじょうぶ!おまえさんの座るとこくらいあるさ!」とソリに乗せていくだけで、心も体もホカホカして来ますよ。

また・・・やはり、2、3歳のお子さまから釘ずけになるのが「The Teddy Bears’NIGHT BEFORE CHRISTMAS あしたはたのしいクリスマス」詩 クレメント・ムーア 写真 モニカ・スティーブンソン 訳 角野栄子 小学館 です。同じクレメント・ムーアの詩で、沢山の絵本が出ておりますが、これはなにしろ夢のある写真を使っていて、見ていると大人までミニチュアのテディーベアの世界に引き込まれていくようです。小さなお子さまには、一緒に写真のページを追うだけでも楽しめるような本です。クリスマスツリーの点滅する光に照らされて、プレゼントの包装紙が輝く。そんな色彩に満ち溢れた本だと思います。

そして・・・「クリスマスにはおくりもの」 五味太郎作  絵本館は、サンタさんはプレゼントをしてくれてばかり。たまには、私がプレゼントをあげる。そう、女の子が思ったお話なのです。サンタさんに何かあげたい。そう思うのは、この女の子だけではありません。どのお子さまも本当に優しい気持ちを持っています。その気持ちを大事に育てる本だと思います。

さて、私がクリスマスの本の中で、一番素晴らしいと思っている本があります。それが、「子うさぎましろのお話」佐々木たづ作, 三好 碩也絵 ポプラ社です。この著者は、途中で視力を失われた方なのですが、それだからこそ、そのことがこの作品の素晴らしさを引きだしたのだと納得できるほど、視覚的にも、聴覚的にも美しく、音が金色や銀色の色彩を伴って輝く、絵本の中から音の輝く欠片がきらきらと舞い散るような、珠玉の作品であると思っております。毎年、国立音楽院ではトーンチャイムを用いて、森の中に輝くクリスマスツリーから響いていた音を生徒の皆さまで再現してみようとするのですが、神々しいほどのこの本の美しさを追うのは並大抵のことではありません。
子うさぎのましろがクリスマスプレゼントがもっと欲しくて、ついてしまった嘘に対する罪の意識とその恐れ、葛藤は、幼い子供の感じる葛藤に通じ、読んでいるこちらまで胸が痛くなるのです。

そして、この絵本と同じくらい素敵な絵本が「クリスマスまであと九日 セシのポサダの日」エッツ&ラバスティダ 作 冨山房 です。ポサダは、メキシコのクリスマスのお祝いです。中にオレンジやレモンやきれいなお菓子を沢山入れた、ねんどのつぼが入っている張りぼてで出来た動物などのお人形の形のピニャタを、用意します。そして、庭などにつるして子供たちみんなが目隠しをして、棒であてて、割り、散らばったお菓子を拾うという、子供達には本当に楽しみなパーティーのようです。クリスマスの前の9日間は、毎晩、違う家で行われるのですが、セシも、もう大きくなったから、今年はセシのポサダを開いて貰えることになったのでした。セシの歓喜の心。そして、誇り。セシは慎重に自分のピニャタを選びます。それは、動物などではなく、輝く星でした。セシの心の中には、その「星のピニャタ」に対する愛情が生まれるのです。それほど、嬉しく、宝物のように思ったピニャタ。誰にも割らせないで、と頼みますが・・・。この本の最後の星との会話の素晴らしさ。セシの心の昇華とでも言うべき結末の言葉は、何度読んでも胸に深く浸透して来るのです。

この「子うさぎましろのお話」と「セシのポサダの日」も、長いお話でもじっと耳を傾けられるお子さまでしたら、幼稚園の年少さんでも、読んであげることが出来ます。年中さんや年長さんでしたら、かなり深く気持ちを理解しながら聴くことが出来るでしょう。

クリスマスソングが静かなものから、賑やかなものまであるように、絵本も静かに浸る本と、楽しむ本両方があってこそです。今日はここまでにいたします。また、ご紹介させて頂きますね。