Ca3801010001001_2 皆さま、大変御無沙汰してしまいまして、せっかくいらして頂きましたのにどうかお許しくださいませ。

・・・ひとつのことしか出来ないのが私の最大の欠点であり、まあ、時に美点にもなりうれば嬉しいのですが。今年度も「リュミエール ド チョコリット」の生徒さんの全員合格!で頭の中は一杯なのです。

ふっと、土曜日の日差しに誘われて、ついでもあり、お散歩に出てみました。そこで出会った「歌を歌うドレスのご婦人」です。おそらく、彼女は小さな帽子をかぶって、ちょっとおしゃれをして日曜日の教会に出掛け、楽譜(ちょっと大ぶりですが、老眼の彼女にはとてもありがたいサイズの楽譜なのです。)を今閉じようとしているところなのでしょう。歩いている先の日当たりの壁に「彼女」を見つけた私は、携帯のカメラでシャッターを押しました。・・・皆様にも、ご婦人が見えて頂けるでしょうか。いまだに、雲が動物やお城に見えたり、ドアノブが人のお顔に見えてしまう私です。・・・おそらく、この先30年生きていたとしても、この性質は変わらないのでしょうね。

さて、「ご婦人」とお別れしてから、しばらく行きますと
工事中の道路に差し掛かりました。アスファルトの道が、ザクッと割られて、直径2メートル程の穴が開いていました。そして、1メートルもの厚みのコンクリートの道の層の下に、地面が覗いていたのです。日差しがその地面を温めているのを見るうちに、私は、何か地面がまたふさがれてしまうのだということに痛ましさを覚えていました。かつて、人々が歩いて、もしかしたら石けりをした子供たちや、登校する子供達を支えていた道。誰かが寄り添ってひっそりと通り過ぎた道。人々の思いや元気さ、悲しさが、そのまま足跡として刻まれる土の道。その道がタイムカプセルのように僅かな時間、地表へと顔を出し、また還っていくこと。そんなことを考えていましたら、知らぬ間に携帯にこんな詩を書き留めていました。いつもは、自分のノートに書き、皆さまのお目汚しはいたしませぬが、お散歩の記念に今日だけは、載せさせて頂きますこと、お許し下さいね!

ー遮断ー

えぐられたアスファルトが 
かつて物思いながら人の辿った土の道との
断絶した時間を手繰り寄せる

道路にポッカリと空に繋がった穴

有無を言わせない厚い層の下で
夢見た日の光との再会

冷え切った体の表面で遊ぶ
束の間の春の日溜まり
僅かな時の隙間に憩う地面
体に宿したまま忘れられた
雑草の種が目覚める

それら横で爆音とともに
運命の様に回転する
コンクリートミキサー車

むき出しの地面と空との間には
神様の決められた人間との距離があったのだ

人間は
分厚くコンクリートを積み上げ アスファルトで蓋をして
神様とのちょうどよい距離を失ったのだ
人間が
神様に近づいた分 神様は遠ざかられたのだ
人間にとっては1メートルという人工道のささやかな厚みが
何万光年にも匹敵する隔たりを招いたのだ

それを知っているのは 発芽の兆しの最中
コンクリートを流し込まれ 窒息した あの雑草の種と
それを抱えていた地面ではないのか

再び 暗く 冷たい 厚い層の下へと還りながら