いつもと違う駅で降りる。そんなことに、楽しさを覚えます。昨日、いつもの駒場東大前駅のひとつ手前の神泉駅で降りてみようと思い立ったのも、そんな気持ちからでした。3時からのご指導までには、まだかなり時間がありました。小雨でした。傘を開き、駅から松濤美術館方面に足を向けて歩き始めました。緑の多い街で、雨に濡れた葉っぱが、輝きながら揺れ、あちらこちらで優しく「こちらよ!」と手招きしているようでした。その時、あの、金木犀の香りの風が吹きました。

金木犀の漂う季節。それは、何かが大きく変化していく季節でした。受験を控えられた皆さまにとっても、今はその変化に備え、最後の準備を整える時ですね。金木犀の香りを大きく吸い込んで、深呼吸して、これまでの努力を胸に歩きだす時が来たのです。もっと、頑張れた筈・・・などと思わないでくださいね!その時々で、色々な出来事や条件があり、その時々ではそれが出来る精いっぱいのことだったのだとお考え下さい。この受験という目標無くしては、在り得なかった、親子での触れ合いや葛藤も全部心の中に集め、胸を張って、歩いて行って頂きたいのです!

そうして、私は金木犀の香りの中、しばらく行くと・・・。なんとも素敵なお店に出会えたのです!珈琲の頂ける、風情ある一軒家。私は、なんだかこのお店に呼ばれていたような気持ちがしました。階段を数段登り、そっとドアを開け、「ごめんください・・・。」と、中へお声をかけたのでした。(本当にどなたかのお宅に伺うようでしたので)中は、なんともくつろげて、思わず本一冊読み終わるまでゆっくりさせていただきたい!なんて思ってしまいました。紅茶や珈琲がいただけて、ゆっくり出来て、雨にぬれたお庭が見えて・・・。そんなお店が大好きな私にとって、このお店はこれからの私の大事な場所にしてしまいたいと思っています。本当に、どこに出会いがあるのか、解りませんね!

帰りに、井の頭線の改札を出て歩いていて、いつもの様に岡本太郎さんのあの大迫力の絵を楽しみに見ようとしていた視線に、ふと異様なものが飛び込んで来ました。それは、少し上から見下ろした渋谷のスクランブル交差点を渡る人々の光景だったのです。私が見たのは大量の傘が彼方から此方へ、此方から彼方へと移動していく様だったのです。移動する傘の集合体は、一つの共通した意思の下に同じ方向へと流れを作って移動していく、六角形の貝殻のような体を持った生物のようにも思えました!切ないな・・・。と思いました。全員が、同じ意志、願いを持った生き物では無いのです。あの、集合体の小さな貝殻のような、うろこのような、そんな破片の下で、人は、どんな人もそれぞれに切実な願いを持って生きている!神様は、そんな多様な願いをどうご覧になるのだろうか。神様も切ない時は無いのだろうか。そんなことを、ふと、考えました。