新年長さんのお母様に、クリスマスのお勧め絵本についてのご質問をいただきました。そこで、本日は、私の本棚にあるクリスマスの絵本をいくつかご紹介させていただこうと思います。先ずは、何を置いても「子うさぎましろのお話」をお勧めさせていただきます。ましろは、おくりものを貰っていたのに、もう一度もらいたくて、サンタクロースにうそをつきました。いろりの炭を体に塗って、別の兎にみせようと思ったのです。サンタクロースからは種をもらうことが出来ました。でも、体の炭は払ってもこすっても取れません。ましろは別の兎になってしまったのではないかと涙を流し、「この種、神様にお返ししておこう。土の中へ埋めて」と思いつきます。やがて、その種はキラキラと輝く、ベルの透き通るような音が重なり合うもみの木になります。悪いことをしてしまったことへの恐れと、清らかであろうとするましろの心の葛藤が愛おしく、清らかな光の中に生きているお子様の心に共感とともに深く響く絵本であると思います。森の中の光のツリーの文章から思い起こされる視覚、聴覚的な美しさは例えようもありません。
「セシのポサダの日 クリスマスまであと九日」は、メキシコでクリスマス前の9日間に、毎晩違う家で行われる「ポサダ」というパーティのお話です。今年、セシのお母さんはセシのポサダをしてくれると言ってくれたのです。セシは、信じられませんでした。それ程、素晴らしいことだったのです。お母さんは、セシを市場に連れて行き、粘土の壺が入っている、紙で出来た様々な形のピニャタの中からセシのピニャタを選ばせてくれました。ピニャタの壺の中に、お菓子などを詰めて、庭につるし、目隠しをした子ども達が棒で割るのです。セシはきらきら光る金色の星の形のピニャタを選びます。そして、その星を誰も割らないようにと望むのです。結局、ピニャタは割られてしまいます。その時、頭の上から声がします。「泣かないでね、セシ。かわいい女の子が初めてのポサダに選んでくれたから、私は今、本当の星になったのよ!」星は空高く飛んでいき、セシは「もうだれもあの星を割ることは出来ないわ!」と思います。「みんなはただ、中に入っている壺を割っただけなの。」セシは、この時、誰も自分の心の中にある大切な物に触れることは出来ないのだ、ということを強く実感したのではないでしょうか。セシのクリスマスのこの経験の素晴らしさに息をのみます。
「サンタおじさんのいねむり」は、疲れて眠ってしまったサンタクロースに代わって、動物達がソリのクリスマスプレゼントを街の子供たちに配りに行くというお話です。サンタクロースは、奥さんが作ってくれたサンドイッチを食べて、コーヒーを飲んでおなかが一杯になって、眠ってしまったのです。このお話の素敵なところは、キツネが疲れているサンタクロースを起こさないように、森の仲間を呼び集め、静かに配りに行くように言うところです。キツネはプレゼントの上に登って、体の大きなものには、大きな包み、小さなものには小さな包みを渡しました。(まさに、集団行動でも求められる素晴らしいリーダーシップですね!)そして、雪の上にプレゼントは配っておきましたよ、とお手紙を残すのです。「あなたの役目だから起きて下さい」と起こすのではなく、みんながサンタクロースを思いやって静かに働く場面は、「こっそりとワクワク」の深い喜びに満ちています。クリスマスはご家族様同士で、こんな「こっそりとワクワク」な出来事があると素敵ですね。
「きのいいサンタ」は、ひとりも寂しい生き物がいないように、という願いを、サンタクロースが実現するお話です。サンタクロースは言います。「だれだい、そこで泣いているのは。子猫の寝るところぐらい、家にあるよ。」プレゼントを配るよりも、道端でひとりぼっちで泣いているありとあらゆる者に声をかけて家に連れ帰ることに尽力します。サンタクロースの家では嬉しい再会が沢山あります。喜びに沸くお部屋のお隣で「いいことした朝は気分ゆったり・・・」と言ってベッドで休むサンタクロースの眠りは、どんなに心地よく深いものでしょうか。
「おもちゃ屋へいったトムテ」2人の田舎に住む姉妹は、お人形を作って街のおもちゃ屋さんに送っています。ある日、その家に住む小人のトムテのいたずらな息子ヌッセが、お人形を送る箱に紛れ込み、街のおもちゃ屋さんに送られてしまいます。そして、ショーウインドウに飾られるのです。ヌッセは、子ども達だけには動いて見せるので、どの子もトムテ人形を欲しがります。そしてヌッセは病気の子供を元気にして、遊ぶお友達まで見つけてあげるのです。なぜ、子どもの頃、お人形が動いて見えたような気がしたのか、そして、なぜ、大切にしていたお人形がある日突然いなくなってしまったのか、子どもの不思議な気持ちに対し、夢のある答えをそっと手渡してくれるような作品です。
「ぴちぴちカイサとクリスマスのひみつ」こちらの絵本は、以前に、絵本にお詳しいチョコリットの大変素敵なお母様にご紹介いただきました。カイサは、おばあさんが育てた元気な女の子です。もうすぐ7歳です。クリスマスの一週間前におばあさんが怪我をしてしまいました。カイサは、大変なクリスマスの準備とともに、おばあさんが作ったキャンディーを街に売りにいくことまでこなすのです。おばあさんは、カイサの為に素敵なひみつの贈り物を用意していました。カイサはその贈り物を見て目がきらきら光りました。でも、おばあさんがカイサからの贈り物を開けたとき、カイサの目は一段と輝いたのです。
ここまでご紹介してまいりました絵本は、本当に自分の為にではなく、誰かの為に一生懸命に働きかける姿に溢れたお話ばかりですね。
「クリスマスのかね」こちらは、ミッション系小学校にお通いの先輩お母様よりご紹介頂きました絵本です。イエス様のお誕生を祝って、一番素晴らしい贈り物が教会に置かれたときに教会の鐘がひとりでに鳴るというお話です。兄弟でクリスマスイブに教会に行くのを楽しみにしていたのに、行く途中、倒れている女の人を見つけます。ペドロは涙をこらえて、弟にお供えする銀貨を託し、女の人を温める為に残ります。弟が教会にその銀貨を置くと、王様の贈り物でも鳴らなかった教会の鐘が鳴り響きます。
「バブーシュカのおくりもの」こちらも、ミッション系小学校にお通いの先輩お母様よりご紹介頂きました絵本です。美しいイラストとともに、ちょっと不思議な気持ちのする絵本です。優しいバブーシュカおばあさんは、心にぽっかりと寂しい穴が開いていて、忘れる為にテキパキとお掃除ばかりしています。まるで、現代のような綺麗に整頓されたお家に暮らしていますので、イエス様がお生まれになったという時代の人のような気がしません。天使様が表れても、「家に上がるなら、足をふいてちょうだい」と言い、「うまごやで生まれた王様ですって?たいへん、いますぐ行ってあげなくちゃ」と、あたたかいショールとピエロのお人形と大人の為の生姜の飲み物を持って家を出ます。今の時代の、どこにでもいる女の人のような表現が、より身近にクリスマスの出来事や意味を感じさせてくれる絵本です。
「ちいさなみっつのクリスマス」こちらは、昨年のリュミエールドチョコリットクリスマスクラシックコンサートにお越し下さいました皆様におみやげとしてお渡しさせて頂きました絵本です。3つのお話の中で、それぞれ愛らしい動物達が、とても大切なことを優しく伝えてくれています。
「クリスマスーよろこばしいしらせー」2つ前のブログでお話しさせて頂きました絵本です。また、ブログに載せさせて頂きました絵画の作者である原田洋子様の絵本です。厩に満ちた光が大変印象深く、素晴らしいです。この絵本に出会ってから、「光」ということばかり考えております。そして、大変僭越でございますが、教室の名前リュミエールドチョコリットの、リュミエールが「光」であることを、今、改めてかみしめております。
「クリスマスものがたり」フェリクス・ホフマンの大変魅力的な、当時の時代そのものが感じられるクリスマスの絵本です。全てのページが壮大に繋ぎ合わされたような絵が奥沢教室にございます。ひつじかいのところに現れた天使様の金色の光が、奥沢の白黒の絵でも光としてハッキリと感じられます。皆様も奥沢にいらっしゃいましたら、是非ご覧下さいませ。
以上でございます。本日ご紹介させて頂きました絵本の中で新しい絵本は「クリスマスーよろこばしいしらせー」のみでございます。クリスマスには毎年、大変素敵な絵本が出版されています。是非、お子様と手に取ってた楽しくお探し頂けましたらと存じます。本日ご紹介させていただきました本の中には廃版になっているものもございます。宜しければ、教室でご覧いただけますのでお声がけください。皆様のクリスマスが心の温かさに満ちたものとなりますようにお祈りしております。