昨日のことでした。個別ご指導で六本木教室の控室のドアを開き、「こちらにどうぞ。」とお母様方とお嬢様お2人に申しあげますと、お2人は「ここにお部屋があったの?」とびっくりしているのです。いつも教室の入り口に並ぶ時に目の前に見えている筈でしたが、このようなことは、お子様にはよくあることなので、私は「そうよ。知らなかったの?」と笑って言いました。生徒たちはそのお部屋に入ると、「先生は今何処から来たの?」と尋ねました。そして、「きっと今、お城から来たんじゃないの?」と話し合っているのです。私はそれを聞いて、「まあ・・・あなた達、まだあのお城のことを覚えていたの・・・?」と、こんどこそ驚いてしまいました。生徒たちは神妙に「だって・・・それは、そうよねえ。」という風に頷き合っていました。

さあ、そこで今日はお母様方がまだご存知(の筈が)無い、六本木教室のアンサンブルの方の突き当りのドアの向こうのお話をさせていただこうかと存じます。それは、春期講習会での出来事でした。私が何の気なしに生徒たちが整列している向こう側のそのドアを開けて出て参りましたら、そこにいた生徒皆が口々に「わあ、驚いた!こんなところにお部屋があるなんて知らなかった。」「私も。」というのです。「あら、だって・・・あなたたち、いつもこの前に並んでいるじゃない。・・・知らなかったの?」「知らなかった。」「私も。」私はその時、少し驚きながらも、それならば・・・と、屈みこんで、並んでいる生徒たちにやっと聞こえる声で「あのね・・・このドアは魔法のドアだからなのよ。」と言いました。皆は釣り込まれたように「ええ・・・すごい!このドアの向こうには何があるの?先生。」と尋ねました。「ええ、それがね・・・このドアの向こうには戸棚があって・・・その中に鍵が置いてあるお部屋があってね。その鍵で、その向こうにまたあるドアを開けることが出来るの。」皆は目をピカピカさせて聞いています。「緑色のドアなの。そのドアを鍵で開けるとね・・・。長い長い階段が続いているの。その階段を降りていくと、その向こうに・・・。」「面白い!何があるの?」私は立ち上がり、小さな声で最後の秘密を明かしました。「・・・お城があるのよ。」その後の歓声は、教室の中に居て、「はい、静かにきちんと並んでいましょう。」と声掛けをして下さっていたアシスタントの先生をびっくりさせてしまう程でした。(ごめんなさい。)「どんなお城なの?」「先生はいつも、そこから来ているの?」「さあ、どんなお城なのかしら。私もよく知らないの。きっと、あなたが考えるお城があるのよ。」

ここからは・・・そのお城についてのお話をさせて頂きます。もし、お子様がお城についてもっと知りたがっていらっしゃいましたら、どうぞお話して差し上げて下さいね。(笑)

「教室のドアの向こうのお城のおはなし」

それはまだ4月になりたての気持ちの良い午前のことでした。私は六本木教室に早くついてしまったので、誰もいない教室の窓から外の景色を眺めていました。すると、窓に卒業生のお姉さまが残していらした影絵があるのを見つけました。ステンドグラスのように、美しい作品で、淡い光がその絵の向こうから差し込んでいました。その絵には小さな階段もありました。私はなんだか不思議な気持ちがして、その絵をもっと良く見つめてみました。すると、その階段を小さな小さな何かの影が駆け降りているのが見えました。私は、思わず「誰か絵の中にいるの?」とその影に向かって尋ねました。するとその影はチョロチョロとどんどんこちらに近付いてきたかと思うと、急に影絵の外へと飛び出したのです。それは、小さな小さな可愛い子リスでした。子リスは「こんにちは。」と私に言いましたので、私も「こんにちは。」と言いました。それでも「リスさん・・・あなたはこの影絵の中に住んでいるの?」と尋ねずにはいられませんでした。すると子リスはクリッとした目でこう答えてくれたのです。「いいえ。私はお城に住んでいるのです。この教室に遊びに来たら、とっても綺麗な影絵が飾ってあったので、見とれていたら、影絵の中に入り込んでしまって・・・迷子になってしまったのです。あなたがお声をかけてくださったから、出口を見つけることが出来ました。これで、お城に帰ることが出来ます。もし・・・良かったら、お城にご一緒しませんか?」私は子リスに尋ねました。「そのお城…伺いたいけれど、この教室の傍にあるのかしら?あと2時間で授業が始まるんです。」すると子リスはにっこりと笑って、こう言ったのです。「ええ、このお隣に。」子リスは驚いている私の手を、その小さな小さな手で引いて、「こちらです。」と案内してくれました。子リスは教室の入り口のところにあるドアをフサフサのしっぽを使って駆け上り、器用に開けました。そこには、いつも私が見慣れた戸棚があるのでしたが、子リスはその戸棚の小さな引き出しの中から鍵を取り出し、そのお部屋の反対側にあるもうひとつの緑色のドアの鍵を開けました。・・・この緑色のドアは、今までいつも鍵がかけられていましたから、私も開けたことは無かったのです。子リスは[こちらです。」と、開いたドアからスルリと出ていきましたので、私も外を覗き、びっくりしてしまいました。そこには長い長い階段がどこまでも続いていたのです。その階段は降っていくと思うと、途中で曲がりくねったり、螺旋になっていたり、上に上っていったかと思うと、急にお滑り台のようになっていて、滑っていくしかないところもあって・・・ちょうど、皆さんが教室で「フルーツの公園の絵」を描いたとき、多くのお友達が遊具と遊具が楽しくつながり合っている階段などの道を描き込んで下さいましたね。私が見たのは、それとそっくりな階段で、大きくて頑丈なあたりまえの階段などではなかったのです。その階段は、広くなったり、狭くなったりしながら、色々なところに寄り道をしていました。私は子リスと一緒に階段を降りたり、上ったり、滑り下りたりしました。そうしてしばらくすると、ようやくその向こうにお城が見えて来ました。どんなお城かですって?ちょうど今あなたが考えている通りのような、それは素敵なお城だったのですよ。私は、あまりにも綺麗なので、驚いたまま、立ち止まってお城を見上げました。すると、先週のクラスで皆さんが描いたような虹の橋がお城の上にかかっているのが見えました。そして、その虹は、お城の窓から出ていたのです。その時、お城の扉が開き、中から皆さんと同じくらいの年齢のお姫様が出てきました。お姫様は子リスに駆け寄り、子リスもお姫様の腕の中に跳びこみ、お姫様はしっかりと子リスを抱きました。子リスはお姫様のリスだったのです。お姫様は「ああ、良かった!何処に行っていたの?」と聞きました。子リスは六本木教室の窓にあった影絵の中に迷い込んでしまったお話をしました。それからお姫様は子リスを抱いたまま、お城の中を案内してくださいました。お城の中には、七色の噴水が流れ出ていて、お姫様がその水を美しいグラスで掬ってすすめて下さったので、飲んでみるとその噴水は7色の果物の味がしていて、混ざることはなく、飲む色によっていろいろな味がしました。赤い色はイチゴのような味でした。オレンジ、レモン、キウイ、ブルーベリー、(・・・群青色は今まで食べたことが無い素晴らしいフルーツの味でした。お姫様に尋ねると、夜のお空の中に生る果物だそうです。)そして、葡萄。その広い広い中庭にはそれは美しい7色のバラが育てられていて、それぞれのバラからは素敵な色と香りの粒が絶え間なく出ていて、その粒が空に立ち上っていました。その粒が集まって虹が作られていたのです。お城の料理長さんは私たちにその虹を掬い取って素敵なシャーベットを作ってくださいました。私たちはその中庭にあるテーブルで楽しくお話をしながら頂きました。お姫様は料理長さんに、そっと何かをお願いしました。「はい!ただ今!」太った料理長さんは、転げるようにして厨房に戻ると、手に何かを抱えて戻ってきました。「これは、私の子リスを助けて下さったお礼です。」とお姫様は私に先ほどの夜のお空に生る果物をプレゼントして下さいました。本当に夜のお空の深い青い色をしていて、形は星の形で、今まで知らなかった素敵な香りがしていました。そこに、演奏家たちが7人やってきました。演奏家たちは空に向かって手を伸ばしました。すると、7色の虹のハープの弦がスルスルと降りてきました。そのハープで演奏が始まりました。その音楽は、例えようもなく美しく、澄んだ音色は虹の色によって異なるのでした。すると、子リスがいつの間にかフルートを取り出して吹き始め、お姫様はまさに虹のような美しい声で歌い始めたのです。音楽は溶け合って天井に向かって上っていったかと思うと、綺麗な光の輪になってゆっくりと舞い降りて来ました。やがて、音楽は静かに静かに終わりました。私は拍手し続けました。その時、お城の鐘が重々しく3時の時を打ちました。私は「まあ、いけない。」と思わず立ち上がりました。「もう失礼しなくては。でも、どの道を通って帰ったら良いのでしょう。」すると、お姫様は「大丈夫です。どうぞ、虹のお滑り台の上を滑ってお帰り下さい。今、虹は六本木教室の緑のドアの裏に繋がっていますから。」と微笑んで、「今日はお城にいらして下さってありがとうございました。本当に楽しいひと時でした。」とおっしゃいました。私も「ありがとうございました
。いつでも、子リスさんを連れて、六本木教室にお越しくださいね。」とご挨拶をしました。それから、お城の料理長さんや演奏家の皆さんにお礼とお別れを告げ、お城の一番上の窓にかかっている虹のお滑り台に座り、振り返ると、お姫様と子リスが手を振ってくれました。私はそれから、長いこと・・・滑って・・滑って・・・滑って・・・。気が付くと、もう、あの緑のドアの向こう側に降り立っていたのでした。
私は緑のドアの中に入ると、中から鍵をかけて、その鍵を戸棚の引き出しに戻しました。そして・・・教室の横のドアを開くと、そこにはもう、皆さんが教室の前に並んでいらして・・・。私は「皆さん、こんにちは。」と言いました。すると皆さんも「こんにちは。」とご挨拶をした後で、「こんなところにお部屋があるの知らなかったわ。先生、ドアの向こうに何があるの?」と尋ねたのでした。そして、私は皆さんに「・・・お城があるのよ。」とお答えしたのでした。
その日から、お姫様は子リスを連れて時々教室にいらっしゃるようになりました。皆さんはそのお姫様と変わらないくらいキチンと座っていますから、お姫様が紛れこんで一緒に制作をしたり、絵を描いたり、皆で何かをしていても気が付かないでしょう。もしかしたら、お隣に座っている、素敵なお友達がそのお姫様なのかもしれませんね。

・・・このお話は、最近の皆様の創造性を伸ばす絵画課題「フルーツの公園」と「虹の橋の上にあるもの」での、皆様のおひとりおひとりが描かれた絵を思い浮かべながら、皆様の絵を全て合わせて一枚の絵を描くように・・・と、編んでみました。本当に、皆様の絵は素敵でした。

さて・・・あなたは、どのようなお城だと思いましたか?また、六本木で教え合いましょうね。でも、教室の横のドアは、くれぐれも開けないようにご注意くださいね。魔法のドアなのですもの。影絵の中に閉じ込められたりしたら、大変です!