最近、たて続けに素晴らしい昭和時代の幼児教育に関する図書に出会え、大きな喜びを感じております。これからその全てを存分に熟読していく所存ですが、まず第一にフレーベル社の初版本から戦前に出た復刻版「キンダーガーデン」を前に、戦前の幼児教育の豊かさに驚いているところです。また、NHKみんなの歌の歌集①~⑱も手に入り、とりわけ①からはこれから「みんなの歌」」という番組を作り上げて行く情熱が漲り、感動を覚えますし、素晴らしい数々の昭和時代の紙芝居にも出会う事が出来ました。これらが、またチョコリットにいらして下さる方々への栄養になりますように、熟考して参る所存です。
さて、そうした中でも最大の喜びは、講談社の「風のうしろのしあわせの島」ジェームス・クリュス作に再び出会えたことなのです。小学校6年生で転校する一週間前にクラスの図書コーナーで出会った本でした。子供時代でも、よく本のタイトルを見て「こんなお話だったら面白いのに。」と空想したりすることがあるかと思うのですが、たいていは良い意味でも、悪い意味でも裏切られますよね。ところが、この本は、まるで当時の私の心の中の夢や願い、憧れを全て結集して出来ているかのような、自分にとっては絶対に手放すことが出来ない奇跡の本に思えたのでした。本当に、1ページ1ページを捲っていく度に喜びが胸に満ち、また惜しくさえあったのです。私は感動を覚えながら夢中で読み、しかし同時に、この本はあと一週間で読めなくなるのだということもよく解っていました。貸し出しは無いので、私は出来る限り短いお休み時間に読んでおこうとしましたが、一週間など慌ただしく過ぎゆき、私は本と別れ、横浜に転校して来たのでした。横浜でもその本は私の心の中を大きく占めていました。そこで、1人でバスに乗り、横浜駅の地下街の書店に行き、お店の方に本名を告げ、捜してもらえないかと尋ねました。すると、その方はちょっと本棚に目をやって、「そのような名前の本は出ていませんよ。」と答えたのでした。私は、今でも思うのです。本好きな方、本を探すという切実さの解る方に、是非書店にお勤めして欲しいのだと。ある人が本を探すということは、大げさになりますが、その人の人生の欠片を探すという、止むにやまれぬ切実なことなのだと思うのです。今でも、その書店で本をお願いしますが、丁寧に検索して近隣の店舗の在庫を確認して下さったり、そのように対応して下さる方には、非常に有難く思うのです。・・・さて、お話が横道に逸れました。小学校の6年生の私は、その時、「確かにある本なのだから、もっと捜してみたい。」と思いましたが、気持ちがくじけてしまったのでした。それからの・・・長い長い人生の中、私の心の中からその本への憧れが消えることは無かったのです。そして、ついにインターネット検索の時代を迎え、私は昔に廃本になってしまったこのいとしい本名を、時々検索しておりましたが・・・そしてついに、アマゾンで所有している古書店をある日見つけ、無事手に入れることが出来たのです。私は喜んで包みを開きました。ところが、何十年も前のことでしたが、何かがちがっていたのです。良く見ると、初版本の年度では、私は中学生だったのです。こちらは、私が読んだ本の後に出たクリュス選集でしたが、私が出会った本はその前に講談社から出た国際アンデルセン賞受賞童話シリーズだったのです。すると、奇跡的に今度はこちらの本も見つかりました。私は、疲れ果てている夜にその本を開こうとはしませんでした。久しぶりのお休みの日、ある晴れた日の午後、私はそっと本の扉を開いたのです。それほどまでにこの本は私にとって神聖なものだったのです。(後半に続きます)