修学旅行のことをふと思い出しまして、突然ですが、書かせて下さいね。阿蘇山のふもとの大平原で乗馬した思い出があるのです。乗馬は馬を引いてもらって乗ることになっていたのでしたが・・・。私はその修学旅行直前の夏休みに8人のグループで小淵沢や清里に出掛けた折りに乗馬をほんの数時間だけ経験していたので、なんだか自分ひとりで乗れるような気分にもなっていたのですね。(おそろしいです。)私が習いたての手綱の持ち方で持つと、馬を引くおじさんが、「おやおや、乗り方を知っているね?その手綱の取り方で解るよ。」とお世辞を言って下さり、「この馬は大人しいから向こうまで行って帰って来てごらん。大丈夫だよ。」と言われるのです。『じゃじゃ馬馴らし』ではありませんが、当時の私は少し『じゃじゃ馬』でした。若さゆえに、何でも出来る!と信じているようなところがありましたから、「大人しい馬」というのにも後押しをされ、「やってみます。」と馬のお腹をちょっと蹴りました。・・・馬はできるだけ静かに歩いてくれたのだと思います。でも、馬の高さから地面を見下ろして私は青ざめました。「・・・こんなに、高かったかしら・・・?」まるで地震の最中、2階から地面を見下ろしているような気分です。馬は血の気の引いた私を乗せて、草千里をどこまでもどこまでも直進して行きました。先程まで聞こえていた友人達のざわめきも既に耳に届かない距離まで来ていました。雄大な阿蘇山がぐっと近くに大きく迫って感じられました。「どこまで行くの・・・?」バスの集合時間も気になります。馬が引き返してくれないから遅刻しました。なんてばかばかしい結末にはなりたくありませんでした。私は夏のにわか講座で覚えていたターンの仕方に見よう見まねで挑戦してみました。「ヒヒーン!」次の瞬間、馬は踊り上がり(・・・のように、私には感じられました)勢いよく駆けだしました。「!!!」私は振り落とされないように必死でただ手綱を握り締めるだけでした。しばらくすると、何の前触れも無く、馬はユーターンして、元来た道を、時には駆け、時には歩きしながら帰り始めたのです。・・・どんなに私がホッとしたのか、言うまでもありません。ついに、友人達の待つ場所まで生還した時、さぞ滑稽な姿をさらしてしまったと思っていた私に、友人は言いました。「スゴーイ!走らせたり、歩かせたり、自由に出来るのね!皆でびっくりしていたのよ。」・・・ずっとびっくりしていたのは、私だったのです。そんな時に、「本当はすごく恐かったのよ!」と言える素直な私でしたら生きるのがもっと楽だったのかも知れません。大学生になった時、既に私は大分素直になっており、友人にも迷わず本音を告げたでしょう。・・・なぜゆえ、高校生の頃はあんなにも張りつめて「かっこ悪い自分」を認めたがらなかったのか。今振り返ると、まるで自分の娘位に別の人格として考えられ、ほほえましくもあり、痛ましくもあり、「大丈夫なのに。」と声をかけたくなってしまうのですが。