・・・その街は不思議な街でした。どのお店の看板も、見たことが無いような珍しい名前が書かれていました。例えば、通りの端には「焼き物屋さん」がありました。ちょっと見ると美味しそうな名前!でも、焼いているのは栗でも、クッキーでもありません。壁にあるメニューを見ると「焼きもち」や「おせっかい」など、変なものばかりが並んでいるのです。私は、試しに「焼きもち」を焼いてもらうことにしました。カウンターの中では、焼き物の窯から煙が立ち上っていて、お店の人が「焼きもち」をかまどの奥に入れてくれました。・・・ほどなく、なんだかくすぐったいような感じが心の奥でしてきました。お店の人が、「はい、焼き終わりました。」と言うので、「え、もう終わりですか?」と聞くと、「ちゃんと、上手に焼けましたからね。」と言うのです。なんだかくすぐったい感じ・・・。ああ、確かに私は焼きもちを焼いてもらったのだと、お店の外に出てから気がつきました。

小学校の6年のことでした。転校先の学校で、わたしはひとりの「焼きもち屋さん」と出会いました。とても大人しい女の子でしたが、絵や刺繍のセンスが眼を見張る程優れたお友達でした。私達は「親友」の約束をして、たいていは一緒にいたのでした。ただひとつ、変わっていたことは、私がその子以外の誰かとお話をすると、走って来て「私以外の人とお話しちゃだめ!」と言って私の手の甲に爪を立てるのでした。おかげで私の手は一時期傷だらけになりました。でも、私は何も思いませんでした。イヤだとか、彼女を遠ざけたいとか。勿論、嬉しくもある筈も無く、そのたびに、「いたい!やめてよ!」と言ってはいたのですが、一方で、彼女の「焼きもち」を受け止めていた自分がいたのです。直ぐに母が気付き、私からその理由を聞き出すと、私の知らないところで大人の話し合いがあったようで、程なくそれは終わりを迎えましたが。でも、教室で振り返るといつもこちらを見ている友という存在が私にはありがたかったのかもしれません。

色々な子がいます。でも、マイナスの表現でレッテルを貼ってしまってはその子の良さがそのシールの陰に隠されてしまいます。今でも、思います。彼女は大人しいけれどもとても情熱を秘めた人だったのではないのだろうかと。私の母は、私の手の傷を見ながら理由を聞き、バイキンが入ったら大変なこととしながらも、「あらあら!」と言って私に笑って「困るわね!」と言っただけでした。・・・そんな母の子で良かったと思います。学校であった何事かに親が過剰反応したら、傷つくのは子供達ですものね!

不思議な街の変なお店シリーズを、急に思い立って書き始めてみました。もちろん、フィクションです・・・なんて、言うまでも無いですよね[E:happy01]