昨日の六本木での新年少さんクラスでは、アシスタントの先生お二人とともに、とても充実した授業を行うことが出来ました。御挨拶のお辞儀もきれいになりましたね!昨日は結局、絵本を4冊も駆使いたしましたが、中でも大変な集中力を発揮して聴いて下さったのが酒井駒子さん作の「よるくま」だったのです。お母様方が、ホワイエからお外に外出された直後にお読みしたのも影響していたのでしょうか。「お母様は・・・?」「大丈夫よ!」そんな会話の後で読んだ「よるくま」は、母と子の対話形式で、夜、坊やのところに、真黒な「よるくま」が尋ねてくるところから始まるのです。眼を覚ましたらお母さんがいなかった「よるくま」の為に、坊やは一緒に「よるくま」とお母さんを捜し歩きます。最後の方で、見つかったお母さんクマは、なんと、大きなお魚を釣り上げたところでした。そのお母さんクマの優しい優しい言葉は、母が眠りにつく子どもを静かにやさしくトントンとたたくリズムにも似ていて、もしかしたら子守唄以上に催眠効果、また癒し効果があるのではないでしょうか。実際、「よるくま」の最後のシーンは坊や自身が眠りに落ち、途中から、語り手が坊やから聴き役であったお母さんにバトンタッチされていたことに気がつかされるのです。よるくまのお母さんがやさしくよるくまに語りかけていた言葉が、坊やのお母さんの現実の声とだぶり、よるくまのお母さんの声がやさしいエコーとともに、滲んでフェードアウトしていく不思議な感覚を覚える作品です!私が愛する「こもりうた」(NHKこどものうた 野上彰作詞 團伊玖麿作曲)も思い起こさせられます。共通するのは、眠る前の母子の会話形式であり、最後は眠ってしまった子どもの声が消え、母のみの声で終結する点です。そして、どちらも大変子どもの心の中の夢を大切にし、非常に子どもの心に「こだま」しているとも言えるでしょう。

「こだま」する。という言葉を初めて伺ったのは、金子みすずの講演会での矢崎節夫さんのお話でした。あろうことか、私はこの講演でのおよそ一時間半というもの、感動の涙を流し続けた、と言うよりも、涙を止められずにお話を一字一句まで書きとめようとメモをとり続けたのでした。矢崎さんは、講演で、最近の親は子どもに「こだま」しなくなったということをお話されました。例えば、ころんで泣いている子に、「痛かったねえ。」と、昔の大人は「こだま」してあげたと言われるのです。そうすることで、確かに、痛みが、スッと引いていくような慰めが与えられますよね。「気が済む」ような方向に気持ちが変わって行くでしょう。言葉のあやではなく、「気が済む」と、「気が澄む」とは似ていると思います。なっとくがいき、決着がつけば、心は健康でいられるでしょう。澄んだ気持ちで、また進んで行けるでしょう。「こだま」しなくなった私達現代人は、子育てが下手になって来ているのでしょうか。

こうすれば、こんな心理的な悪影響につながる、とか、その結果、せっかく持っている才能の芽をつむことになる、とか。そんな本や情報が氾濫しています。でも、もっと、私達は自分の子どもを自分の心の目で見てあげるべきなのでしょうね。あのエジソンの逸話、小学校の先生が、こんなに出来の悪い子どもはいない!と言ったのに対し、この子はけっして出来が悪いのでは無い!と信じて育てたあの母のように、自身の目に自信を持つことも必要なことなのでしょう。かく言う私も、エジソンの母のようになど、とてもでは無いですが、なれませんが。甘やかすのと、「こだま」する違いも、本当に紙一重のところにあるのだと思います。難しいです!

そういえば、私の愛する児童文学者、今江祥智さんの講演会でのお話で、お母さまが、幼い祥智さんに、お洗濯物を干しながら語られたという「ベティさんのお土産」のお話も、「よるくま」のおかあさんの語り口に似ています。お母さまは、ゆっくりとした口調で、ベティさんが、祥智さんにお土産を買ってきてくれる話をされるのです。何がほしいのか、祥智さんに聞きながら、「ベティさんのお土産」はひとつひとつ増えていくのです。まさに、文学者を生み出す母の姿なのかもしれません!引き出し方の素晴らしさに感銘を受けます!

引き出す、と言えば、今日、新年少さんからはいろいろな言葉や身体表現を引き出させて頂きました!大変素敵なことを沢山言って下さったり、一生懸命、色々な生き物になりきってくださったのですが・・・。そのあまりの可愛らしさに、帰る途中で、アシスタントさんとお話していて、思いだし、思わず「本当に、可愛いかったですね!」と涙ぐみそうになりました!この授業の準備の為に、昨晩、知らず知らずのうちに、とうとう徹夜してしまったのですが、本当に、報われます!・・・そうなんです!毎回、どのクラスの授業が終わっても、お子さま達の魅力や愛らしさは、帰宅する心の中で、本当に暖かく灯っていてくださるのですよ!「可愛かった!良く頑張って下さった!」そんな思いが私を支えているのです[E:confident][E:shine]