もうすぐ、金木犀の花の香りが漂う季節になりますね。そんな折でした。主人の転勤で名古屋の名東区 上社という転勤者の坩堝に転居しましたのは。いつも、静かに風が吹き渡る素敵な丘の上の街でした。お引っ越しをして、しばらくは、どこに行っても、金木犀の香りの風の中にいました。それからの、あの3年半という時間は、絶対に忘れようの無い、幸せに包まれたものだったのです。あっという間に、名古屋の心優しきマダム達のお仲間に入れて頂き、もうそれからは・・・[E:happy01]今、こうして仕事中心の生活を送っておりますと、竜宮城から帰った浦島太郎のように、あれは本当にあったことなのかしらといぶかりたくなる程、甘やかな思い出とでも申しましょうか。名古屋のマダム達って、それは素敵な生活を楽しんでいらっしゃいました。ロマンチストな方が多いように思いましたね。名古屋市の郊外には、それはそれは趣のあるお店が点在していて、ほとんど毎日、お友達達とお出かけしては、色々な種類のクリスマスローズの咲くテラスのあるお店で、ゆっくりとコーヒーをいただいたり、素敵な隠れ家風の雑貨屋さんの奥で、お茶をいただきながら、手染めのスカーフを選び合ったり、ランチで感激したお店は、一体いくつあったのでしょうか!建物にも、お食事にも、大人の遊び心がしのばれることばかりで。本当に、名古屋のガイドブックを書きたいくらいです!そんな思い出の中でも、とりわけ印象深かったのは、M様宅でひらかれたそれは素敵な展示会だったと思うのです。

M様とは、私よりも年上の、尊敬している主婦の鏡のような方です。瀬戸にある御自宅は、「一見さんおことわり」のような老舗旅館を思わせる造りでした。そして、M様は色々な御趣味をお持ちだったのです。陶芸もプロ級でした。M様は、お仲間と3人で、「陶芸、古布で作った小物、ステンドグラス」の展示会を御自宅で開かれたのですが、何が素敵って、門のところに「どなたも、ご自由にお入り下さい。」と張り紙をだされたのです。そして、お客様がいらっしゃると、手作りのおはぎやお寿司、美味しいお茶等を振る舞われ、大忙しでした。ステンドグラスは、お仲間の小学校の先生が創られた、これまでに見たことが無い、童話の世界が描かれたもので、夢のように美しかったのです。心の贅沢と申しましょうか、いつか私もあんなに趣のある風になりたいと憧れました。そうそう、ご主人さまは、カービングと言って、木で小鳥を彫刻される御趣味をお持ちでした!小鳥の羽一本一本を丹念に彫りあげられ、一体が完成するのに、3,4カ月はかかるとおっしゃっていました。

ずっと憧れ続けていた「展示会」でしたが、その後M様に伺ったお話です。「困ったこともあったのよ。まったく知らない男の方がいらして、お茶をお出ししたんだけど、何もお話もされずに、ずっと座っていらして、私、困ってしまったわ!」・・・確かに!でも、やはり、いつか私もそこまでの心のゆとりある素敵な生活を!と思っております、M様!