私の駒場の教室は、ノンペーパー校の受験対策を行う。しかし、内容はむしろペーパー校の対策より頭を使うと思うのだ。頭も、心も、身体も、バランス良く動かしていきたいと、考えている。私は子供たちに、自分の足で、自分の向きたい方向へと、自分の意思で進んでいく人になってほしいと、心のそこから願っている。これは、いつか「青山学院初等部入学試験問題」で書いた、幼児教室の「定型文」では、決して無い。

 名門と言われる私立男子校の内がわをよく知っている。小学校6年生でも、大根を見たことが無い子がいた。改札口を知らない子もいた。どの子も、大切に育てられていた。しかし、男の子だからキッチンに入ったことが無いとか、お料理の時間は勉強しているからという問題では無い。自分の仕事は机に座ることで、あとの家庭のなかのこと、世の中のことは「他人ごと」である等と、思ってしまわせたら、その子は不幸である。

 青学で、そうしたこと(物事を、他人事では無く、自分事として考えられるか)を問う問題がよく出題されている。「問題解決能力」を問う問題である。駒場クラスでは、毎回そうした分野のチャレンジがあるのだが、今回は、過去問を借り、「缶の中の鈴を割り箸と半分の長さのストローとセロテープで取りなさい。」という課題だった。鈴には輪になった針金がついている。「今回は、協力して考えてごらんなさい。」と言うと、一生懸命「どうしたらいいのかなー?」と、考えてくれた。ストローを飲むときのように、折り曲げるところまで来て、割り箸に刺しこんでみると、ちょうど良い長さになった。「でも、先生、抜けちゃう・・・」と困ったところに、「あと、セロテープも使って良かったのよね。」と助け舟。すると、「釣りざおみたい!」と喜んで、無事、缶の底から鈴を釣り上げてくれたのだった。今日のように、実際に使えるものを触って、考えるということが重要で、回を重ねていけば色々なものを組み合わせることで、色々な問題解決の道具が出来るということを楽しむまでに持っていきたいと思う。是非、ご家庭でも、そのような機会を作って頂けたらと思います。「困ったわ!どうしたらいいかしら?」と言われると、どの子も張り切って、考えてくれるはずです。

 アシスタントの先生ともお話したのだが、今回体験にいらして下さったお子さんは、リズム感が良く、音楽が始まると、サッと集中することが出来た。表現の基礎である空間を意識してもらうために、星屑のようなきれいな曲に合わせて、教室中に散らばった星を取りに出掛けた。見えないかごを渡すと、取った見えない星をその見えないかごにちゃんとしまってくれる。「随分、かごが重くなってきたでしょ?」と聞くと、ちゃんと「重い」と答えてくれ
た。高いところ、低いところ、きちんと、私の空間の可能性のお話を理解した動きが出来て、素晴らしいと思った。

「かみさまからのおくりもの」という絵本を読み、「あなたは、神様からどんなプレゼントを頂いたと思いますか?」と聞くと、はにかんだように、「歌う、です。」と教えてくれた。「そうなの、あなたは、歌うのが、好きなの?」と聞くと、今度は、にっこりと嬉しそうに、「好きです!」表情が本当に魅力的である。もうお一人からは、意外な答えが返って来た。「ちからもち、です。」「そうなの。どうして、そう思うの?」「よく、お母様のお手伝いをするから。」
どの子も、揺るぎ無い答え。真心からの答えである。

ご家庭での、日頃の躾が、偲ばれるお子さま達でした。基本的な、両手で受け取る姿勢や、直ぐに言える「ありがとうございます。」。お預かりするのが、楽しみなお子さまです。今日見せてくれた、知的好奇心を色々な方向に広げて行かれたら、と、楽しみでたまりません!来週も、お待ちしておりますね!